月のための建築

ワクチン接種会場で順番待ちをしながら、月のための建築についてなんとなく考えた。曇りガラスの外にも人が等間隔で並んで、みんな当たり前だけど大人しく待っていて、問診室と接種室に一人ずつ吸い込まれていく。私もその数珠の一粒。接種しているのは、月の雫だったりするのかもしれない。月のための神殿。

そう考えるのも、結局思考停止して流れに身を任せて、自分でもよくわかっていないものを取り込むことに決めて、頭のやり場がなくなったからかもしれない。

月のための建築というのが、いつからか気になっている。都市の無意識を意識化するカギがそこにある気がする。

それは新しい建築物でもありうるし、すでにあるものが実はそうだったケースもあると思う。建物だったら、月の動きを意識した建築。日当たりならぬ月当たりとか。カレンダーはある意味、月のために設計された建築物。たまに見上げると月が映り込んでいるあのビルの窓も。都市には無数の窓がある。

月は一個しかないけど、たくさんあることも否定できない。小さい頃大好きだった絵本に、Many Moonsというのがあった。病気のお姫様を元気にするため、月が欲しいのという彼女のリクエストに応えようと右往左往する王様や財務大臣、博士たち。しかし常識的に考えれば月なんて手に入らない。最後に、賢い宮廷道化師が姫に相談に行って、、という話。

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脳には、脳内GPSと言えるような、自分がいる空間の全体像と、自分の位置を認識する細胞があることを知った。「場所細胞」と「格子細胞」。ラットで最初に発見されて、今ではヒトでも確認されている。この2種類の細胞を発見し名付けた3人の科学者は、2014年ノーベル医学・生理学賞を受賞した。最初の「場所細胞」発見から40年後のこと。